第2回 キッコーマン株式会社

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▲バーチャル工場見学もある、キッコーマンのホームページ(「亀甲仙人のしょうゆ塾」より)

幸せな食体験づくりをめざす
キッコーマンの試み
~しょうゆ塾の食育活動など~


おしょうゆの味は、日本人の味覚の原点といっても、いいすぎではないであろう。
「おいしい記憶をつくりたい。」を社のスローガンとするキッコーマン株式会社。
全社をあげてのプロジェクトを推進している、食育活動の経緯と内容について、経営企画室 大津山厚氏にお話をうかがった。

「キッコーマンしょうゆ塾」などの出前授業も好評
講師は社員から募集

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キッコーマンさんのホームページを拝見しまして、「キッコーマンしょうゆ塾」などの活動を行っていることを知りました。 まずは、キッコーマンさんの食育活動が、どのように発展してきたのか、教えてください。

▲キッコーマン株式会社
 大津山厚氏(経営企画室)

2005年に国会で「食育基本法」が成立しました。 それに先立ち、2004年7月に、トップから食育についての動向を研究し、当社で具体的に何をできるか検討するように指示があり、プロジェクトを発足しました。

その後、全社をあげてのプロジェクトに発展しました。

2006年4月に、社員を対象にアンケートをとったところ、約9割の社員が、当社が、食育活動を行うことに意義を感じているという結果が出ました。 会社として食育活動を行うことは、食品会社につとめる誇りにもつながることがわかりました。


プロジェクトとしては、理想的な展開ですね。具体的には、どのような活動を行っているのでしょうか?

先ほど名前の出た「キッコーマンしょうゆ塾」も、その一例です。 社員2名がひとつのチームになって、関東、中部、近畿地方の小学校に無償で出前授業に行く活動です。

キッコーマン社員2000人の中から、しょうゆ塾の講師を公募にして、自発的に手をあげさせたところ、165人の希望者が集まりました。 正直、希望者は、かなり少ないと予想していましたので、うれしいおどろきでした。

▲キッコーマン社員が講師になって小学校で行う「しょうゆ塾」出前授業

「しょうゆ塾」は45分間の授業です。現在の光村図書3年の「国語」の教科書で、「すがたを変える大豆」という単元があり、 その単元を勉強した子どもたちに授業をすると、特に双方向のコミュニケーションが活発になります。 「しょうゆの原料に何があるかな?」と質問をすると、「コウジカビ!」とすぐさま答えがかえってきて、講師のほうがおどろくこともしばしばです(笑)。

しょうゆ塾の授業の台本や、授業の運び方は、NHK日本語センターの方に、監修をしてもらっています。 講師となる社員もロールプレーイング(模擬授業)の実習を通じた指導を受け、授業の質の向上につとめています。


講師になる社員に、専門家の研修を受けさせるというのは、丁寧なつくりですね。「しょうゆ塾」のほか、食育活動として、どのようなことがあるでしょうか?

大人が対象になりますが、当社の「キッコーマン総合病院」の院長による、食を通じた健康管理や、 ごはん主体の食事メニューを提案するようなホームページからの情報発信を行っています。

▲おしょうゆの原料にもふれられる、体験型の工場見学

それから、昔から行っている「工場見学」を大切にしています。さまざまな理由で、工場見学縮小のメーカーもあると聞きますが、 当社の場合は、むしろ工場見学の来場者が増える傾向にあります。野田工場のケースでいうと、 プロジェクトで導入したさまざまな方策の効果が表れ、過去3年間で2万人ほど来場者が増えています。

アルコール飲料の工場のような、洗練された施設ではありませんが、「おもてなしの心」がまず大事と考え、食の原点にふれられるような2時間程度の 体験型メニューを組んでいます。おしょうゆの原料にふれたり、素焼きのおせんべいを焼いて食べたり、と。

野田工場の「ものしりしょうゆ館」の中に、「まめカフェ」というスペースをつくりましたが、そこではおしょうゆ味のソフトクリームが食べられたり、 とうふを食べての3種類のしょうゆの利き味ができるなど、ユニークだと好評です。ささやかな試みではありますが、しょうゆの魅力を知ってほしいと思っています。

そのほか、キッコーマンアカデミーという専門家の講師派遣やキッコーマン国際食文化研究センターの食文化に関する情報発信といった活動等もあり、 ご興味のある方は、当社のホームページをごらんください。


特に小さな子どもには、
幸せな食の記憶を重ねてほしい

食育活動を続けていくには、どんなことが大切だと思われますか?

「地道な活動で、自分たちのできることを行う」ことが、続けていく秘訣ではないか、と思っています。 自分たちの事業に密接にかかわるもので、関わる社員が「参加してよかった」と思える活動であるから 継続できるのだと思っています。

先ほどの「キッコーマンしょうゆ塾」もおかげさまで好評で、毎年参加校が増えており、 2007年度は155コマを実施しました(2006年度は119コマ)。 その一方で、急激に手を広げすぎないように気をつけています。授業の質を低下させないためです。 地道に発展させ、広げていくことが理想だと思います。


最後に、キッコーマンさんとして、子どもたちに一番何を伝えたいでしょうか?

「おいしい記憶をつくりたい。」を、コーポレートスローガンとしていますが、 食にまつわる幸せな記憶、すなわち「おいしい記憶」を積み重ねられるよう、応援をしていきたいという気持ちです。

幼いときに食べたものの記憶は、大人になっても忘れられないものですから。



★キッコーマン株式会社の食育活動ホームページ
http://www.kikkoman.co.jp/shokuiku/

●YPPインタビュアー 取材後記●
子どもの時に食べていた味は、大人になっても忘れらない、
ということはよくあるものです。
「おいしい記憶をつくりたい。」というスローガンは、自分の体験と照らし合わせても、とてもすてきなことばだな、と思いました。

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