第3回 株式会社村田製作所

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▲村田製作所のホームページ

短期間でプロジェクト化に成功
村田製作所の「理科教育」

~セイサク君、小学校へ行く~


「ムラタセイサク君(R)」は、村田製作所が開発した自転車型ロボット。S字型の平均台や坂道を走り、完全に停止しても倒れないという不思議なロボットである。
セイサク君を活用した、村田製作所の「理科教育」の活動について、広報部 企業広報課の吉川浩一氏、高橋正嗣氏、泉淳一郎氏にお話をうかがった。

*「ムラタセイサク君(R)」は、株式会社村田製作所の登録商標です。

授業で「セイサク君」を使うことは、
小学校からの要望ではじまった

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村田製作所の広告で「理科はすきですか」というコピーを拝見しました。会社全体として、「理科」とのつながりを積極的に打ち出しているように見えます。まず、その背景についてお聞かせください。

▲広報部の「理科教育」を担当するメンバー。泉淳一郎氏(向かって左)、吉川浩一氏(中央)、高橋正嗣氏(右)

当社は、電子部品を主力商品とする製作所で、「ものづくりの会社」「技術でなりたつ会社」であると認識しています。

村田製作所が何をしている会社であるかを皆さんに知っていただくために、また、社会の中での会社の役割を考えて、「理科とのかかわり」を強く打ち出しています。


そう考えると、村田製作所が小学校で「理科教育」の出前授業を行うことも、ごく自然な流れですね。この活動は、いつから、どのようなことがきっかけでスタートしたのでしょうか?

実は活動そのものは、比較的最近のもので、2006年にスタートしました。

昨今、教育界でも子どもたちの「理科ばなれ」が問題になっていますが、セイサク君が予想以上に子どもたちに人気が出たこと、また、当時の社長(現会長)が、将来のものづくりを担う人材不足を懸念し、業界全体で何かをしなければ、と理科ばなれ阻止の取りくみを訴えたことを受けてスタートしたプロジェクトです。

「理科教育」の出前授業は、2006年は11校、2007年は39校ほど実施しました。エリアは、当初は、本社が所在する京都周辺が中心で、関係会社が数多く存在する北陸エリアへ拡大し、現在では国内外広く実施しています。

多くの学校から声がかかり、授業の実施回数も増えていますが、その反面、日程が合わない、手がまわらない場合が出てきているのが、もっかの悩みです。


ごく短い期間のうちに、活動を軌道に乗せたようですね。具体的にはどのような内容の授業を行っているのでしょうか?

当社の開発した「ムラタセイサク君(R)」という、自転車型のロボットを活用しての内容が中心です。

2005年のCEATEC JAPAN(シーテック ジャパン/アジア最大級の最先端IT・エレクトロニクス総合展)で、「セイサク君」が話題になったこともあり、「セイサク君」を使って授業をしてほしいと、小学校側からの要請ではじまったものでした。口コミや、地元紙などの紹介により、大きな反響があったので、「理科教育」専任者を配置するなどして、本格的な取りくみをしました。

「セイサク君」をPRしはじめたころは、展示会で見ていただくことは考えていましたが、正直、それを活用して小学校で授業をすることは、あまり考えていませんでしたので、小学校から要請があったことは大変うれしかったですね。


▲S字型平均台もすいすい走る「セイサク君」

小学校側の要望にこたえるかたちで、活動が広がっていったのですね。
ところで、「セイサク君」には、どのような理科的な要素があるのでしょうか?

電子部品はもちろんなのですが、「自転車がなぜ倒れないか」というのは、よく考えると不思議なことで、理科的な教材がぎっしりつまっています。本気で話せば、大学生を対象にしても耐えられる内容なんですよ。

小学生には、「自転車がなぜ倒れないの?」「自転車は、どうして立っているの?」という問いかけから、「ジャイロセンサ」で傾きを検知し、お腹の円盤を回すことによりバランスを保つしくみを説明しています。ジャイロセンサが、デジタルカメラの手ぶれ防止や、ゲーム機など、多くの身近な機器に使われていること、そしてムラタのいろいろな部品についてまで話をつなげていきます。

▲「セイサク君」を中心とする、小学校での出前授業

本当は、もっといろいろなことを子どもたちに教えたいという気持ちなのですが、1コマの時間が45分、また、子どもたちの理科的な知識も限られています。 ですので、「理科はおもしろい」と感じたり、「どうして倒れないのかな?」と不思議に思ったりなど、理科学習への動機づけをするまでを、この活動のひとつの目標にしています。

子どもたちが「理科ばなれ」していると言われていますが、子どもたちは決して理科がきらいなわけではない、ということは実感しています。



「なぜ?」と思った気持ちを
深堀りしてほしい


子どもたちは、理科がきらいなわけではない、というのは明るい材料ですね。
ところで、活動の内容について、どんなところが今後の課題でしょうか?

カリキュラムの内容は、現在のところ、活動を走らせながら改善していく、という段階なので、エレクトロニクスのことなど、さらに充実させていきたいですね。

今は説明をしたり、見てもらったりという、どちらかというと、「こちらから子どもたちに情報を与える」という内容が中心なので、もっと実験の要素を入れたり、双方のやりとりがあるような内容にブラッシュアップしていきたいと思っています。

ロボットには多くの技術の要素がつまっています。少し先の話かもしれませんが、ロボットのしくみについて子どもたちが知識をもったら、次は動くものをつくってみたり、つくったものを披露しあうような大会ができたらいいな、と将来の夢を描いています。


「ムラタセイサク君」を活用した「理科教育」のほか、村田製作所として行っている社会貢献活動は、ほかにあるでしょうか?

別チームとなりますが、「環境学習」をテーマにした出前授業は、「理科教育」よりも先に、2005年からスタートしています。

▲「エレきっず学園」のホームページ

また、当社のホームページに「エレきっず学園」という子ども向けのサイトをつくっています。ここでも、子どもたちに理科や環境に関する情報を発信しており、喜んでもらっています。

そのほか、スポーツや文化振興のイベント等の協賛・主催も行っておりますが、関心のある方は、村田製作所の「CSRへの取り組み」のホームページをご覧ください。


本日は、いろいろなお話をありがとうございました。最後になりますが、子どもたちへの「理科教育」を担当され、一番、子どもたちに伝えたいことは何でしょうか?

そうですね、今、便利な生活になれてしまって、多くのことがあまりにも当たり前になってしまっていると思います。

「テレビがうつるのはなぜ?」「携帯電話で、話しができるのはなぜ?」

よく考えると、身のまわりには、「なぜ?」と思うことや、不思議なことがいっぱいです。何でも、いろいろなことに関心をもって、「なぜ?」と思った気持ちを深堀りしてほしいと思います。

苦労して調べること、実験してみること、自分の五感で試してみること・・・。
自分の手を動かして、「なぜ?」と思った気持ちを深堀りしていけば、そこに「発見」や「気づき」が生まれます。さらに、普段はなにげなく感じていた「当たり前」のことが、とてもすごいことだと気づくことも多いのではないか、と思うのです。



★株式会社村田製作所「CSRへの取り組み」ホームページ
http://www.murata.co.jp/corporate/csr/index.html/

●YPPインタビュアー 取材後記●
ヒット作のロボットを上手に活用し、会社の強みが打ち出された事例だと思いました。短期間の間に、プロジェクトを軌道に乗せた取りくみは、社会貢献活動をはじめたいと思う企業・団体にとっても、さまざまなヒントを提供してくれているのではないでしょうか。

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