2008年8月アーカイブ

第5回 株式会社島津製作所

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▲島津製作所の「え~こクラブ」のホームページ

島津製作所の環境活動チーム
「え~こクラブ」の試み

~環境教材づくりと出前授業など~


京都に本社をおく株式会社 島津製作所は、ノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏を輩出した企業でもある。
「え~こクラブ」は、その島津製作所の環境活動チームであり、このチームが、大学生らと共同で環境教材をつくり、小学校でカードを使った「出前授業」も行っている。
活動の内容について、「え~こクラブ」の大瀬潤三氏、岡崎令子氏にお話をうかがった。


環境問題に前向きな人たちが集まり
「え~こクラブ」が誕生

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島津製作所さんに、「え~こクラブ」という環境活動チームがあることを知りました。まずは、島津製作所の環境への取りくみ、および、「え~こクラブ」が誕生したきっかけについてお聞かせください。

1996年に、世界的な動きとして、ISO14001(環境マネジメントシステムに関する国際規格)が発行されるようになりました。その翌年の1997年に、島津製作所の三条工場がISO14001を取得、その後、国内・海外の工場でも次々とこの国際規格を取得しました。そのノウハウを生かし、現在では、他社さまのISO14001認証取得の支援もしています。

ISO14001の取得は、社内の環境に対する意識を高めるのに役立ちました。ですが、数年すると、活動に目新しさがなくなり、大きな効果が出づらくなってきました。

そこで、女性の感性をいかして、職場だけでなく、日常生活での環境保全活動を始めようと、「え~こクラブ」が結成されました。それが1999年です。


▲「え~こクラブ」のよきアドバイザーでもある、大瀬潤三氏

なるほど。「え~こクラブ」が結成され、それから、子どもたちに対して活動を行うようになったのは、どんな理由からでしょうか?

当初は、ポケット型灰皿、エコライフを送るためのヒント集の作成などを通して、社内の環境活動を進めてきました。その後、そうした活動やそのノウハウを社外にも提供できないかということで、小中学生を対象に「出前授業」を行うようになりました。その背景には、我々の環境に対する取りくみが、大人の視点にかたよりすぎてはいないだろうか?との疑問が出てきたこともあります。

私たち大人は、比較的よい環境を、その上の世代からいただいてきました。その一方で、私たち大人は、次の世代によい環境を子どもたちに渡せるのだろうか、そんな疑問です。

我々が「環境」と「子どもたち」に対して、もう一歩先に進みだす必要があると感じて、「え~こクラブ」を中心に、「出前授業」を行うようになったのです。


どのような方たちが「え~こクラブ」に加わったのでしょうか? また、会社の中で、チームはどのような位置づけなのでしょうか?

企画自体はトップダウン式にはじまりましたが、女性社員を中心に、女性ならではの視点を生かし、職場だけでなく、子どもたちを対象にしたり、日常生活の身近なところから環境問題に取りくもう、ということを活動の主旨とし、環境問題に前向きな人たちを集めて、チームづくりをしました。

▲「え~こクラブ」のリーダー、岡崎令子氏

「え~こクラブ」の活動は、一定の時間内は業務と認められていますが、専任者がいるということではなく、メンバー全員、本業とする仕事がほかにあります。部署横断的に、ボランティア精神のある人たちが集まったチームとして、定着していると思います。



最新作の「bidi(ビディ)」カードは
動植物の絶滅危惧(きぐ)種がテーマ

社員のボランティア精神が、活動を大きく支えている、というのは心強いですね。
先ほどは、「え~こクラブ」の結成当初の活動についてお話がありましたが、そのほか最近では、どのような活動を行っているのでしょうか?

過去約9年間の間に、いろいろな活動を行ってきましたが、ここ数年は、小学生向けの「環境教材づくり」と、その教材を使った小学校での「出前授業」を活動メニューのひとつとしています。

▲最新作「bidi(ビディ)」カードは、動植物の絶滅危惧(きぐ)がテーマ

一番最近の話ですと、「bidi(ビディ)」カードという、動植物の絶滅危惧(きぐ)種をテーマにしたカードゲームが、2008年の3月に完成しました。「bidi」は、biodiversity(生物の多様性)から、「bio」のbi、「diversity」のdiをとって名づけたものです。

これは、同志社大学と、京都精華大学の学生さんとのコラボレーション企画です。同志社大学の経済学部(環境経済学)のゼミの学生さんがゲームのアイディアを考え、京都精華大学の学生さんがイラストを描き、我々島津製作所メンバーが、子どもをもつ母親の視点から、子どもたちに受け入れられるかどうかの検討と、企画全体のとりまとめを行いました。

学生さんも、我々メンバーも、それぞれに考えやポリシーをもっていますので、ぶつかるときにはぶつかりながら、お互いに納得しながら前に進み、教材の完成までに半年以上の時間を要しました。


完成したカードゲームについての反応は、いかがでしょうか?

カードが完成した直後に、小学生や大人を対象にゲームをしてみましたが、年代にあわせた遊び方ができるので、小学校低学年から大人まで十分に楽しめるゲームであるとの感触を得ました。意外にも、お父さんたちが夢中になるゲーム、との感想もいただきましたよ(笑)。

2008年の7月から、この教材をもって小学校で「出前授業」を行っています。特に宣伝をしているわけではないのですが、口コミや「京都商工会議所」のご紹介で、2008年度は20校程度で授業を行うことを計画しています。



出前授業では
子ども10名に社員1名が入るシフト


▲「京路地(みやこ ろじ)すごろく」を検証する、「え~こクラブ」のメンバー

そのほかに、どのような「環境教材」をつくられましたか?

「環境教材づくり」は、2003年からはじめており、最新作の「bidi」カードは4作目です。

小学生には1作目は、2003年の「世界水フォーラム」をきっかけにしてできた、「雨水くんの冒険 双六」で、こちらは英語版も作成し、ユニセフに寄贈しました。

2作目は、「アースちゃんのエコライフ」で、省エネやリサイクルをテーマにしたすごろくゲームです。

3作目は、「京路地(みやこ ろじ)すごろく」で、京都の町を舞台にリサイクルをテーマにしたゲームですが、こちらは京都大学の学生さんとの共同開発でした。
この教材から、「学生とのコラボ」という動きもプラスされ、4作目の「bidi」カードの開発へとつながっています。「bidi」カードは、今後、英語版も作成の予定です。


「産学連携」という新しい要素が加わったのは、おもしろい展開ですね。
ところで、小学校でカードを使った「出前授業」を行っているというお話ですが、授業についての小学校側の反応はいかがでしょうか?

▲環境教材ゲームを使った「出前授業」

先生たちとお話をすると、先生たちはさまざまな課題を抱えていらっしゃり、「環境教育」をやりたいと思っていても、社会との関わりの中でどのように展開したらいいのか、準備に十分な時間がさけないなどの問題があり、我々の活動をうまく活用してくださっているように思います。

昨年からは、単発的な授業だけではなく、1年の年間計画の中で、環境教育を行ってほしいという依頼も出てきており、これまでの活動を評価してくださった結果と受けとめています。

また、子どもたちの反応ですが、校外から人が来て、授業を行うということが刺激になるようです。出前授業の時間はとても集中している、ということで、先生たちも子どもたちのふだんとは違う様子に、とてもおどろくようです。

ただ、「ゲーム」を行うにあたっては、子どもたちが勝敗にこだわりすぎないように、我々も気をつけるようにしています。子ども10名のグループに社員1名が入り、できるだけ、子どもたちひとりひとりをケアできるように心がけています。



環境活動を続けるポイントは
「楽しみを見つける」こと


長年、活動を行ってきた経験から、「環境活動」を継続していくためのポイントは、どのようなところにあると思われますか?

教材づくりや、小学校の出前授業のほかに、「え~こクラブ」には、会社の屋上でグリーンを育てる「屋上緑化」や、「町の清掃」などの活動もあるのですが、環境問題に注目しつづけることや、活動しつづけることが、意外とむずかしいと思う場面があります。

▲屋上でグリーンを育てる「屋上緑化」

「環境問題」は、ややもすると一時的に盛りあがって忘れてしまう、という危険をはらんでいるように思います。

そういったことにならないように、活動から「楽しみを見つける」というのが、意外と続けるためのポイントのように思います。これはさりげなく周囲を活動に巻き込むためにもです。

「屋上緑化」を例にしますと、花を植えて水を与える、ということだけですと、ともすると屋上に行くことすらおっくうになりがちですが、ある年に落花生を植えて、成長記録をホームページで発表しながら、最終的には収穫を行い、希望者に種を配布する、ということを行いました。育てている自分たちも楽しいと思いましたし、他の社員も注目してくれていたな、という感触がありました。

▲リサイクルや分別活動の結果、あらたに生まれたグッズ類

また、社内のリサイクルや分別活動の結果として、ポケットティッシュやノート、炭などをつくり、「自分の行ったことが、どのような結果になっているか」を見てわかるようにしています。

細かいところですが、意外とちょっとした「楽しみ」や「結果」が、継続するための秘訣なのでは、と思います。

また、活動メンバーの立場として言えば、あまり気負いすぎないことでしょうか。そのときそのとき、一番必要なことは何かなと考えながら、一歩一歩前に進めばいいのだと思っています。


  本日は、いろいろなお話をありがとうございました。最後に、環境活動のとりくみを通して、一番、子どもたちに伝えたいこと、行いたいことは何でしょうか?

親の立場からすると、自分の身にてらしあわせても、「子どもに言われたこと」というのは、意外と心にささるものです。ですので、子どもに教えるというよりは、子どもといっしょに学んでいきたい、と思いますね。

それから、企業の立場から、ということで言いますと、各社企業によってそれぞれに考えがあるかと思いますが、我々の場合は、あえて企業色を出さずに環境活動にたずさわりたいと考えています。小学校で授業をするのも、いいことづくめ、学ぶことばかり。環境の問題というのは、企業だけの問題ではないですし、未来の地球という大きな視点からとらえたいと思います。

「循環して還ってくる」。すべてのことが、そういうものだと思いますから。



★株式会社島津製作所「え~こクラブ」ホームページ
http://www.shimadzu.co.jp/aboutus/eco/eco_club/index.html

「bidi」カードほか、すごろくゲーム類は、送料実費分の切手代のみ負担で、一般にも無料配布されています。応募については、上記の「島津製作所ホームページ」にてご確認ください。

●YPPインタビュアー 取材後記●
子どもや地球の未来について、おひとりおひとりが真剣に考えながら、でも、気負わない「え~こクラブ」のメンバーの方たちの姿が、とても印象に残りました。環境活動を続けていく難しさをよくご存じのうえで、「楽しみを見つける」ことが、継続の秘訣とのコメント。この言葉に、社会貢献活動を続けていくためのヒントがあるように思いました。

第4回 京都商工会議所

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▲京都商工会議所のホームページ

「京都商工会議所」 が推進する
小学校への出前授業

~「環境教育」をテーマとした取りくみ~

「商工会議所」とは、地域に根ざしながら、商工業の改善や発展を支援する総合経済団体である。そして「京都商工会議所」は、その名称のとおり、京都の経済・産業を支援する団体だが、「環境教育」をメインとする、小学校への出前授業を推進しているという。
その活動について、産業振興部 まちづくり推進担当の谷口真氏にお話をうかがった。


活動がスタートして7年目
ここ2年で、急に参加者がふえる傾向に

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京都商工会議所が、小学校への「環境教育」の出前授業を推進していると聞きました。まず、推進をスタートした時期と、京都商工会議所の役割について教えてください。

スタートしたのは、2002年からです。
京都は「京都議定書」(注:1997年、温室効果ガス排出量の削減等について議決した議定書)が締結された地域ということもあり、環境先進都市としての役目を担っていると思います。こういった背景もあり、当時の担当部の部長と現場担当者とのアイディアで立ち上げたもので、誰かにうながされたというものではありません。

我々、京都商工会議所は、いわばコーディネーターの役割を果たしています。

議員企業(注:京都商工会議所の会員である、京都のある有力企業。2008年度現在、議員企業は150社)に対し、小学校で出前授業を実施したい企業を募集し、一方では教育委員会に、企業からの出前授業を受け入れたい小学校を募集します。そして、私どもが企業と小学校の調整を行って、出前授業を成立させるというものです。

活動の初年度は、企業5社、小学校6校で試行的にスタートしましたが、7年目の2008年度は、21社、55校が参加の予定です。過去6年間で、累計約1万人の子どもたちが参加したことになります。

過去の参加企業・小学校等の数字は、こちらをご覧ください。

年度   協力企業数   授業実施校数    参加児童数
2002年     5社         6校            297名
2003年  13社       19校         1100名
2004年  13社       23校         1413名
2005年  16社       33校         2125名
2006年  17社       39校         1988名
2007年  20社       51校         3064名


活動の立ち上げから2006年までは、一部の凸凹はあるものの、順調に右肩に推移している、という印象です。2007年になって、急に参加小学校と児童数がふえましたね。このあたりは、何か理由があるのでしょうか?

▲「授業実施企業をはじめ、各方面の方のご支援・ご協力により、さまざまな賞をいただいています」と語る、谷口真氏

ここ2年の動きは、我々もおどろいています。
このように急に要望が高まっている理由は、今まで地道に行ってきた活動が認知されてきたこととと、企業のCSR活動への意識が高まってきているからでしょうか。

おかげさまで、2005年度には資源エネルギー庁長官賞、2007年度には京都市教育功労者表彰、そして本年度2008年度には京都府環境トップランナー表彰と、続けて賞をいただきました。また、新聞、テレビ、ラジオ等のメディアで紹介されたり、日本商工会議所の中で紹介されたりと、皆さんから注目される場面もふえてきました。



商工会議所、企業、小学校
3者のそれぞれのメリットとは?

出前授業の内容について、京都商工会議所から企業側に要望を入れることはあるのでしょうか?

各企業の授業の具体的な内容については、私どもとしては企業のアイディアや自主性を尊重するスタンスです。企業によって得意分野は異なりますし、さまざまなメニューがあることも活動のメリットととらえています。

ただし、活動の趣旨がぶれないように、出前授業の目的が、「環境問題に積極的にとりくんでいる京都企業の環境技術や取りくみを小学生に紹介する」「京都企業に対する関心を深める」「人材を育成し、将来、地域の社会や経済に貢献する」といったことであることは、企業の参加を呼びかけるときに確認するようにしています。


なるほど。出前授業の内容は、いろいろなメニューがある、ということですが、例えばどんな授業があるのですか?

▲水質を浄化する植物「ヨシ」の効果について語る出前授業

造園業の会社では、樹木医という「木のお医者さん」が講師になって、木のことや、植樹のことからはじまり、CO2のこと、命の大切さへとつなげる授業をしています。

エネルギーの会社では、電気やガスの実験など、理科的な要素を入れた授業を行っています。

なお、出前授業を実施したあとは、子どもたちの作文や先生方からのアンケートをいただいています。これらは、随時、実施した企業にもフィードバックしています。最終的には、年度末に参加企業が集まる懇談会を行い、企業名と学校名をふせた形で、アンケートの集計結果を参加企業の皆さんに配布し、他社がどういった授業をしているのか、どういったことが子どもたちや学校側に喜ばれるのかなど、情報を共有し、内容の改善ができるようにしています。


情報の共有は、企業側にとってもありがたいでしょうね。活動を続けてこられて、どういった点で成果が出ていると思われるでしょうか?

成果については、「京都商工会議所」、「企業」、「小学校」と、それぞれにあると思います。

まず、我々「京都商工会議所」は、「環境先進都市・京都」を内外にアピールでき、会員企業のイメージアップにもつながっています。また、これをきっかけに会員企業の環境担当の方などとのつながりができるので、この活動以外のことでご相談を受けた際にも、このつながりが生かされる場面があります。

▲印刷をテーマにした出前授業

企業については、一度参加された企業でやめたケースというのは、まだありません。最近の世の中の動きとして、企業のCSR活動・環境活動は重要になってきていますので、何かしらの意義を感じていただいているのだと思います。また、授業を行う講師は若手社員であることがの場合も多いのですが、子どもたちに説明するということは、誰にでもわかりやすく説明する必要があり、自社の企業活動を整理したり、わかりやすく伝えるにはどうしたらよいかを考えるよいチャンスになるようです。

小学校については、外部から人が来て授業を行うことが、子どもにとっても、先生にとっても刺激になる、ということです。先生方からは、ふだんと違う、意外な子どもの一面を発見しておどろくといった声はよく聞きますし、他の人の授業を見ることによって、自分の授業の仕方の面でも参考になる、といった意見をいただきます。

また、子どもたちの作文に、「名前は知っていても、何をしている会社か分からなかった。授業を聞いてわかるようになった」「その会社の製品を使ってみたいと思った」「今までよりも、環境を考えるようになった」などの感想を目にします。こういった意見や感想をいただくと、実施企業や私どもにとって、活動を進めるうえでの、大きなはげみになります。


活動の本当の成果は、
子どもたちが大人になる10年、20年先

今後、この活動をどのように発展させていきたいとお考えでしょうか?

まだ参加されていない議員企業には、参加していただきたいですし、個人的な意見になりますが、将来的には議員企業以外の企業にも範囲を広げられたら、と思います。小学校も、京都のすべての小学校に参加していただきたいですね。そのためには、我々もその規模にたえられるよう、受け入れ体制をととのえていく必要がありますが。この活動にかかわるすべての皆さんに、満足しもらえるものにしていきたいと思います。


本日は、いろいろなお話をありがとうございました。最後になりますが、出前授業を推進する活動を通じて、京都商工会議所として、一番期待していること、願っていることはどんなことでしょうか?

近い将来、ということでいえば、子どもたちが高校、大学を出たあとに、ぜひ授業を受けた企業をはじめ京都を拠点とする会社を選んでほしいですね。 

ただ、この活動の本当の成果があらわれるのは、実は10年、20年先の話だと思っています。ものづくりをする心、環境の問題・・・子どもたちが大人になったときに、少しでもこの活動が役に立っていれば、と願っています。



★京都商工会議所ホームページ
http://www.kyo.or.jp/kyoto/index.shtml

●YPPインタビュアー 取材後記●
子どもたちが、将来就職する際に、京都の企業を一番はじめに選んでほしいという、はっきりとした団体としての目的をもちながら、「本当の成果は10年、20年先」というコメントがまさに的を射ていて、印象に残りました。地域の総合経済団体だからこそできる、コーディネーターとしての「商工会議所」としての役割に、今後も期待していきたいと思います。